高松地方裁判所 平成元年（わ）７７号 判決 1989年9月27日
本店所在地
高松市朝日町五丁目四番三三号
株式会社日ノ丸急送
（右代表者代表取締役 石原正吾）
本籍
香川県大川郡志度町大字小田一一九七番地
住居
高松市木太町二七一六番地二
会社役員
石原正吾
大正五年六月一八日生
右の両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官田村範博出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社日ノ丸急送を罰金二〇〇〇万円に、被告人石原正吾を懲役一一月に、それぞれ処する。
被告人石原正吾に対し、この裁判の確定した日から三年間、その刑の執行を猶予する。
理由
（罪となるべき事実）
被告人株式会社日ノ丸急送（以下、「被告会社」という）は高松市朝日町五丁目四番三三号に本店を置いて貨物自動車運送業を営むものであり、被告人石原正吾は被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括管理しているものであるが、被告人石原は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上金額を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿した上、
第一 昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が八一一六万四七四一円で、これに対する法人税額が三三六六万九一〇〇円であったにもかかわらず、同年五月三一日、同市天神前二番一〇号所在の高松税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額が二二九八万二〇五七円であって、これに対する法人税額が八四九万六三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書（平成元年押第三八号の14）を提出しそのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により、前記正規の法人税額と申告税額との差額二五一七万二八〇〇円を免れ
第二 昭和六〇年四月一日から昭和六一年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億一〇五万二〇一円で、これに対する法人税額が四二五四万五六〇〇円であったにもかかわらず、同年五月三〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が二五八四万八四一九円であって、これに対する法人税額が九九八万三一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書（同押号の15）を提出しそのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により、前記正規の法人税額と申告税額との差額三二五六万二五〇〇円を免れ
第三 昭和六一年四月一日から昭和六二年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億九九七万五五三四円で、これに対する法人税額が四六三一万三四〇〇円であったにもかかわらず、同年六月一日、前記税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額が四九三五万五八三七円で、これに対する法人税額が二〇一五万一六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書（同押号の16）を提出しそのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により、前記正規の法人税額と申告税額との差額二六一六万一八〇〇円を免れ
たものである。
（証拠の標目）
一 被告人石原の当公判廷での供述
一 被告人石原の大蔵事務官に対する質問てん末書八通、検察官に対する供述調書二通
一 被告人石原作成の上申書
一 畑尾綾子の大蔵事務官に対する質問てん末書四通、検察官に対する供述調書
一 石原正貴、西川鉄雄（二通）、土橋敏男（二通）、井上啓二、森三徳の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書（三通）、簿外利益調査書、運賃収入調査書、給料手当調査書（原価）、雑給与調査書（原価）、福利厚生費調査書（原価）、外注費調査書（原価）、退職金調査書（原価）、消耗品費調査書（原価）、修繕費調査書（原価）、租税公課調査書（原価）、地代家賃調査書（原価）、燃料費調査書（原価）、フエリー運行料調査書（原価）、通行料調査書（原価）、事故費調査書（原価）、傭車料調査書（原価）、車検費用調査書（原価）、タイヤチューブ費調査書（原価）、雑費調査書（原価）、修正申告による当期受入金調査書、法定福利費調査書、福利厚生費調査書、退職金調査書、消耗品費調査書、事務用品費調査書、旅費交通費調査書、広告宣伝費調査書、接待交際費調査書、修繕費調査書、支払手数料調査書、租税公課調査書、諸会費調査書、会議費調査書、販売手数料調査書、雑費調査書、受取利息調査書、受取配当金調査書、雑収入調査書、有価証券売却益調査書、租税公課（利子税）調査書、租税公課（事業税）調査書、賞与引当金戻入調査書、賞与引当金繰入調査書、接待交際費損金不算入額調査書、役員賞与損金不算入額調査書、役員報酬（その他所得）調査書、受取利息（その他所得）調査書、接待交際費損金不算入額（その他所得）調査書
一 野村証券株式会社高松支店支店長森本和克他一名（二通）、大和証券株式会社高松支店支店長矢野進一他二名、株式会社中国銀行高松東支店支店長森池清他一名（三通）、株式会社三菱銀行高松支店支店長岡本敏男他一名（五通）、株式会社富士銀行高松支店支店長酒見哲夫他一名、株式会社三井銀行高松支店支店長服部滋他一名、同支店支店長佐々木正人他一名（二通）、百十四銀行松福支店支店長安倍忠他一名（七通）、株式会社高知相互銀行大津支店支店長佐々木友茂他一名、株式会社四国銀行卸団地支店支店長有安弘次他一名、株式会社日本長期信用銀行高松支店支店長高橋昌生他一名、高松信用金庫坂出支店長造田静男他一名、株式会社香川相互銀行飯山支店支店長井村康雄他一名、株式会社愛媛相互銀行高松支店支店長菅昭一他一名、株式会社兵庫相互銀行花園支店支店長三好明他一名、株式会社高知相互銀行高松支店支店長南紀夫他一名、四国交通共済協同組合理事長北野孝夫他一名、（二通）、四国ダンロップ販売株式会社高松営業所福島和正作成の各証明書（添付の各資料を含む）
一 四国ダンロップ販売株式会社営業部長吉原厳作成の申述書
一 日本抵当証券株式会社代表取締役小幡琢也他一名作成の「取引内容照会に対する回答」と題する書面二通
一 高松法務局登記官作成の被告会社の登記簿謄本
一 被告会社代表取締役石原正吾作成の被告会社の定款の写し
一 押収してある総勘定元帳二綴り（平成元年押第三八号の１）、総勘定元帳一綴り（同押号の２）、総勘定元帳一綴り（同押号の３）、預金メモノート等二袋（同押号の４）、支払給料月別明細書綴り一綴り（同押号の５）、決算資料（第三〇期）一綴り（同押号の６）、個人給与明細書類綴り一綴り（同押号の７）、金銭出納簿一冊（同押号の８）、金銭出納帳一冊（同押号の９）、総合口座通帳二冊（同押号の10）、金銭出納帳一冊（同押号の11）、金銭出納帳一冊（同押号の12）、決算書原稿綴り一綴り（同押号の13）、法人税確定申告書一綴り（同押号の14）、法人税確定申告書一綴り（同押号の15）、法人税確定申告書一綴り（同押号の16）
（法令の適用）
被告人石原の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、右各所為は被告会社の代表者が同社の業務に関してなしたものであるから、同法一六四条一項により同社に対しても同法一五九条一項所定の罰金刑を科することとし、情状により同法一五九条二項を適用し、被告人石原については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により右各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で、被告人石原については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断することとし、被告会社を罰金二〇〇〇万円に、被告人石原を懲役一一月に、それぞれ処し、情状により同法二五条一項を適用して同被告人に対しこの裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
（裁判官 福井一郎）